今、子どもたちに必要とされている力のひとつが「創造性」です。ただ自由に絵を描くだけではなく、自分で考え、工夫し、形にしていく力。この創造性を育てる方法として、いま注目されているのが「デザイン思考」です。これは、大人のビジネスの世界でも使われている“問題を見つけて、工夫して解決する考え方”のこと。この記事では、子どもでも楽しく取り組めるデザイン思考の取り入れ方や、創造性をぐんぐん伸ばすコツをわかりやすく紹介していきます。
デザイン思考とは?子どもの創造性を引き出す教育法
最近、「デザイン思考」という言葉を耳にすることが増えてきましたよね。これは、大人のビジネスだけでなく、子どもの教育にも活用できる新しい考え方なんです。特に、子どもたちの「創造性」、つまり“自分の頭で考えて形にする力”を育てる方法として注目されています。ここでは、デザイン思考の基本や、それを子ども向けにどう活かせるのかを、解説していきます。
デザイン思考の基本概念とプロセス
デザイン思考とは、相手の気持ちを理解するところから始まり、アイデアを出して試し、何度も改良していく「考える→つくる→試す」の繰り返しを大切にする方法です。
この考え方は、5つのステップで進めていきます。
- 共感(Empathize):相手の立場になって、その人が何に困っているかを感じ取ります。
- 定義(Define):感じたことをもとに、どんな問題を解決すればいいのかをはっきりさせます。
- 発想(Ideate):自由にアイデアを出して、解決のヒントを探します。
- 試作(Prototype):出てきたアイデアの中から形にして、実際に作ってみます。
- テスト(Test):作ったものを使ってもらい、感想を聞いてもっとよくします。
このように、デザイン思考は答えを急がず、相手の立場や使いやすさをじっくり考えるところが特長です。子どもがこの流れを体験すると、発想力だけでなく、人の気持ちを大切にする感覚も自然と身につくのが魅力なんです。
子ども向け教育にデザイン思考を取り入れる理由
子どもたちは、もともと「なぜ?」「どうして?」と好奇心がいっぱい。デザイン思考は、その好奇心をぐっと深めて、実際に「やってみる力」へと育ててくれます。
自分で考えたことを、友だちと一緒にカタチにしたり、人に見せたりする経験は、「できた!」という自信にもつながります。学校の授業だけでなく、家庭での遊びや会話の中でも取り入れることができるので、日常に無理なくなじみます。
たとえば、富士通が行っている「ワクガク★プロジェクト」では、子どもが自分で問いを立て、実際に答えを見つけていく体験が組み込まれています。大人が教え込むのではなく、子ども自身が考えるプロセスを大切にしているのです。
このような活動から、子どもたちは「考えるのって楽しい!」という気持ちを育てていきます。自然と、創造性も引き出されていきます。
創造性を伸ばすための思考フレームワークとは
子どもの創造性を伸ばすには、「やってみる」「失敗してみる」「また考える」といった繰り返しがとても大切です。デザイン思考は、そのサイクルをうまくまわしていく“フレームワーク(考え方の型)”なんです。
教室で一方的に話を聞くだけでなく、自分の手で作ってみる。誰かに見せて意見を聞き、それをもとにまた工夫してみる。こうした学び方は、子どもたちの「もっとやってみたい!」という気持ちを引き出します。
たとえば、渋谷区の「シブヤ未来科」では、地域の課題に子どもたち自身が向き合い、アイデアを考える授業が行われています。正解がひとつではない課題に取り組むことで、「こうしてみたらどうだろう?」という創造的な思考がどんどん広がっていきます。
大切なのは、うまくいかなくても失敗を否定せず、「またやってみよう」と背中を押すこと。そうした環境が、子どもの中にある可能性を引き出す力になります。
子どもの創造性を高めるデザイン教育のメリット
自由な発想と課題解決力が身につく理由
デザイン教育では、「正解はひとつじゃない」という考え方を大切にしています。これは、子どもたちが自由にアイデアを出し、自分らしい答えを見つけていくための土台になります。たとえば「未来の公園をつくろう」というテーマがあったとき、大人なら無意識に今あるものを参考にしてしまいがち。でも、子どもは空を飛ぶ滑り台や、水に浮かぶブランコなど、思いもよらない発想を見せてくれます。
そうした自由な発想を実際の形にする中で、「どうやったら実現できるかな?」「どこを工夫したらいいだろう?」と考えるようになります。これが、課題解決の力へとつながっていくんです。失敗してもやり直せる環境だからこそ、試行錯誤が自然と身につきます。
デザインによって育まれるコミュニケーション能力
子どもが自分のアイデアを人に伝えたり、他の子の作品について意見を言ったりする機会は、デザイン教育の中でたくさん生まれます。ただ言葉で説明するだけでなく、絵や模型を使ったり、実際に動かしてみたりと、いろいろな方法で「伝える力」を育てられるのが特徴です。
また、グループで何かを作る時には「自分の考え」と「相手の考え」をどうやってうまくまとめるか、ということも大切になってきます。ぶつかることがあっても、それをどう乗り越えるかが、コミュニケーション力を鍛える絶好のチャンスになります。
こういった経験を重ねることで、話す力、聞く力、そして協力する姿勢もぐっと成長していくのです。
創造性と論理的思考を同時に伸ばす効果
デザイン教育は、ひらめきだけでは成り立ちません。たとえば「こういうものを作りたい!」と思ったら、どうすればうまく動くのか、どんな材料が必要か、順番にどう作るかなど、考えなければいけないことがたくさん出てきます。
これはまさに、論理的に考える力を使っているということ。つまり、自由な発想(創造性)と、筋道を立てて考える力(論理的思考)をバランスよく育てられるんです。
失敗したときも「なぜうまくいかなかったのか」「どう直せばいいのか」と考えることで、より深く学べるようになります。実際、プログラミング教育とデザインを組み合わせる小学校の授業でも、こうした力の育成が注目されているんですよ。
デザイン×子ども=未来への可能性を広げる創造性
変化の激しい時代に求められる創造的スキル
現代社会は、AIやテクノロジーの進化により、変化のスピードが加速しています。このような時代には、既存の知識だけでなく、新しい価値を生み出す「創造的スキル」が求められています。子どもたちが将来、未知の課題に柔軟に対応し、自らの力で解決策を見つけ出すためには、創造性を育む教育が重要です。
デザイン教育は、問題を発見し、解決策を考え、実行するプロセスを通じて、子どもたちの創造的思考を養います。このような教育を受けた子どもたちは、将来の社会で活躍するための基礎を築くことができます。
子どもの自己肯定感を高める創作活動の力
創作活動は、子どもたちの自己肯定感を高める効果があります。自分のアイデアを形にし、他者に認められる経験は、自信につながります。また、創作活動を通じて、失敗や試行錯誤を経験することで、粘り強さや問題解決能力も育まれます。
例えば、ある子どもが自分で考えたキャラクターを描き、それを使って物語を作る活動を行ったとします。このプロセスでは、想像力や表現力が養われるだけでなく、自分の考えを他者に伝える力も身につきます。このような経験は、子どもたちの成長にとって非常に貴重です。
家庭や学校でできる創造性の育て方とは
創造性を育むためには、家庭や学校での環境づくりが重要です。以下に、具体的な方法をいくつかご紹介します。
- 自由な発想を尊重する:子どもが自由に考え、表現できる環境を整えましょう。
- 失敗を恐れない姿勢を育てる:失敗を経験として受け入れ、次に活かすことの大切さを教えましょう。
- 多様な体験を提供する:美術館や博物館の訪問、自然との触れ合いなど、さまざまな体験を通じて、感性を刺激しましょう。
- 対話を大切にする:子どもの考えや感じたことをじっくり聞き、共感することで、自己表現の意欲を高めましょう。
これらの取り組みを通じて、子どもたちの創造性は自然と育まれていきます。
デザイン×子ども=未来への可能性を広げる創造性
変化の激しい時代に求められる創造的スキル
私たちの生活は、毎年のように大きく変化しています。新しい技術が登場し、仕事や学びの形もどんどん進化しています。こんな時代に必要なのは、与えられたことをただこなす力ではなく、「自分で考えて、つくる」力です。
たとえば、何もないところから遊びをつくったり、困っている人のために何かを考えたりすることは、まさに創造的なスキル。デザイン教育は、それを自然に育てることができるんです。子どもたちは、自分の目で物事を見て、「どうしたらもっとよくなるかな?」と考えるようになります。
最近は、小学校でもSTEAM教育(科学・技術・工学・アート・数学を組み合わせた学び)の中で、デザイン思考を取り入れる動きが広がっています。これは「正解が1つじゃない課題」に取り組む力を養うための取り組みで、創造性がしっかり鍛えられる方法として注目されています。
子どもの自己肯定感を高める創作活動の力
子どもが「自分で考えて作る」経験をすると、自然と「やればできるんだ」という気持ちが育ちます。これは「自己肯定感」と呼ばれ、自分に自信を持てるようになることです。自己肯定感があると、新しいことにも前向きにチャレンジできるようになります。
たとえば、ある子どもが段ボールでロボットを作ったとしましょう。最初はうまくいかなくても、工夫しながら形にしていく過程で、自分の考えが「カタチになる」楽しさを知ります。そして、「これは僕が考えたんだよ」と人に見せたくなるような誇らしい気持ちが生まれるんです。
この「できた!」という成功体験は、小さくても確かな自信になります。デザイン活動を続けるうちに、子どもは自分のアイデアを大切にするようになり、表現することにも積極的になります。
家庭や学校でできる創造性の育て方とは
創造性は特別な授業や特別な道具がないと育たない…そんなことはありません。家庭でも学校でも、ちょっとした工夫で子どもの創造性をぐんと伸ばすことができます。
たとえば、子どもが「こんなの作ってみたい」と言ったら、できるだけ否定せずに応援してみてください。「それ面白そうだね!どうやって作る?」と声をかけるだけで、子どもの頭の中はアイデアでいっぱいになります。
また、普段の生活の中に「選択肢」を作るのも効果的です。服を自分で選ぶ、遊ぶ道具を工夫して使う、絵本の続きを自分で考える、そんな小さな体験も創造性を育てるきっかけになります。
家庭では一緒に工作や料理をするのもおすすめ。学校では、自由にアイデアを出せる図工や総合的な学習の時間がその場になります。大事なのは、「失敗しても大丈夫」と思える安心感のある環境を用意すること。これが、創造性を育てる土台になります。
子どもの創造性を育むデザイン教育プログラムと教材
ナインキッズラボ(9kidslab)
ナインキッズラボは、オンラインで参加できるクリエイティブスクールです。小学生を対象に、遊びと学びを組み合わせたプログラムが展開されています。デザイン思考をベースにしており、「課題を見つける→考える→形にする→発表する」という流れの中で、子どもたちは自分のアイデアに自信を持てるようになります。
オンラインなので、全国どこからでも参加できるのも魅力のひとつ。表現が苦手な子でも、個性を大切にしながら取り組める内容になっています。
デザインフォーチェンジ・ジャパン(DFC Japan)
DFCジャパンは、インド発の教育プロジェクト「Design for Change」を日本向けに展開したものです。子どもたちが「身近な社会の課題に目を向け、自分たちのアイデアで行動を起こす」ことを目指しています。
活動は5つのステップに分かれていて、「感じる→定義する→考える→形にする→伝える」という流れで進められます。特徴は、結果よりも「過程」に重点を置いていること。途中で失敗しても大丈夫。むしろ、その中で学ぶことが、子どもにとって大きな成長につながります。
ケンチク脳<こども>デザインアートラボ
このラボでは、建築をテーマにしたユニークなデザイン教育が行われています。建物をつくるという体験を通じて、空間の感覚やバランスの取り方、構造の面白さなどを楽しく学べるのが特徴です。
また「論理的に考える力」と「ひらめき」を同時に育てるカリキュラムが用意されていて、理系と文系どちらにも通じる力が身につきます。工作やブロック遊びが好きな子にとって、ワクワクしながら学べる環境です。
ワクガク★プロジェクト(富士通)
富士通が行っている「ワクガク★プロジェクト」は、企業が教育に関わる例としてとても注目されています。このプロジェクトでは、小学生が社会課題について自分なりに考え、どうすればその問題を解決できるかを探っていきます。
授業の中では、オリジナルの「問いかけカルタ」などユニークな教材を使いながら、子どもが自分の興味や関心を引き出せるように工夫されています。IT企業ならではの視点が、学びに深みを加えてくれます。
キッズデザインスクール mangrove
mangroveは、デザインを通じて「自分の考えを形にすること」と「他者に伝えること」の両方を大切にしたスクールです。ワークショップ形式の授業では、実際に子どもたちが街の課題に取り組んだり、未来のアイデアを考えたりしています。
「こうだったらいいのに」を実際の行動につなげる体験ができるので、自然と主体性が育ちます。また、作品を発表する機会も多いため、表現する力や伝える力がしっかり身についていきます。
まとめ
子どもの創造性は、これからの時代を生き抜くうえでとても大切な力です。デザイン思考を取り入れた教育は、自由な発想や問題解決力、そして他人と協力する力を自然に育ててくれます。学校や家庭、さまざまな学びの場で取り入れられる工夫もたくさんあります。まずはできることから、小さな一歩を踏み出してみませんか?子どもたちの「考える力」と「つくる力」は、きっと未来を切り開いてくれます。